日本酒の発酵に必要な菌とは?微生物の種類や役割を解説
日本酒が伝統的な発酵飲料であることは広く知られていますが、発酵の際に必要な麹についてご存知でしょうか?日本酒は、製造の過程において酵母菌や麹菌などの微生物の力を借りて、まるで生き物のように育っているのです。本記事では、日本酒造りに必要な菌についてそれぞれ解説します。麹とは何かや発酵に微生物が必要な理由なども、基礎から解りやすくお伝えするので、ぜひチェックしてみてください。
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発酵に微生物が必要な理由
例えば、ワインであれば、ぶどうに含まれる糖分が発酵することで、つぶして放置しておくだけで自然とアルコールが発生します。しかし日本酒の場合は、蒸米に糖分が含まれていないため、水と合わせて置いているだけではアルコールが生み出されません。ここでアルコールを発生させるために、微生物の力を借りる必要があるのです。
麹とは?
麹とは、日本酒を造る上で非常に重要な微生物(カビ)である麹菌を繁殖させたものです。日本酒以外にも、味噌や醤油なども麹を原料として造られています。日本酒ならではの風味豊かな味わいを引き出す大切な役割も果たしており、日本酒造りに欠かせない存在です。
日本酒造りに必要な微生物
ここからは、日本酒作り微生物の特徴を1つずつ見ていきましょう。
麹菌の特徴と役割
麹菌とはカビの一種であり、麹の原料にもなる微生物です。日本国内のみで使用されており、貴重なものは「国菌」として認定されているものもあります。麹菌が活発に繁殖するための最適な温度は、30℃〜40℃の間です。15℃以下になると完全に働かなくなり、50℃を超えると完全に死滅してしまいます。麹菌は非常にデリケートなので、温度管理には十分に注意しなければなりません。
麹菌の主な役割は、米のデンプンを糖分に変換させることです。麹菌に含まれるアミラーゼと呼ばれる酵素を利用して、デンプンを糖化させる手伝いをします。また、発酵の工程において日本酒の旨みを生み出す作用も、麹菌の大切な役割です。
酵母菌の特徴と役割
酵母菌とは、麹が作り出した糖分を分解して、アルコール分を生み出すための微生物です。酵母と一口に言っても、ビール用やワイン用、日本酒用など、造るお酒の種類によって異なります。日本酒用の酵母は温度変化に強いことが特徴です。
酵母菌には、アルコールを生み出す以外にも日本酒をフルーティーに美味しく仕上げる効果が認められています。日本酒独特の奥深い甘みや香りの高さは、酵母の働きによるものです。
乳酸菌の特徴と役割
乳酸菌とは、腸内環境を整える役割を持つ微生物で、ヨーグルトやチーズなどを想像する方も多いのではないでしょうか。健康をサポートする役割を持つ乳酸菌ですが、実は日本酒を醸造する際にも役立っています。
酒母は、米麹、蒸米、水を合わせたところに酵母を加えて、2〜4週間の日数をかけて培養します。このときに、雑菌による汚染を防止して日本酒造りに必要な酒母のみを培養するために必要なのが乳酸菌です。さらに、まろやかな味わいに仕上げるという大切な役割も果たしています。
硝酸還元菌の特徴と役割
硝酸還元菌とは、乳酸菌を増殖させるために使用する微生物です。硝酸還元菌は、水分内に含まれる硝酸塩と呼ばれる成分を、亜硝酸に還元する作用のある微生物で、日本酒造りの工程に用いることで高い抗菌効果を発揮します。
日本酒を製品として出荷するためには安全性と一定の品質をキープしなければならないため、硝酸還元菌の持つ抗菌作用がとても重要です。また、日本酒本来の甘さや辛味などを表現するためにも一躍買っています。
日本酒造りに必要な菌を学び、日本酒の奥深さを楽しもう
本記事では、日本酒造りに必要な微生物について解説しました。奥深い味わいや甘みを持つ日本酒を造るために、いくつもの微生物がそれぞれの役割を担っています。日本酒造りに関わる菌を知ることで、日本酒の世界をさらに楽しむことができるでしょう。